後編

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「……矢野。酔い醒めた?」 「だから。俺、酔ってないって」 「あ、そう?」 そっか。 と言う事は、酔った勢いじゃない。って方向でいいのかしら?? 「俺、多分、お前が思ってるよりも、志保の事好きだと思うけど?」 「は??」 矢野はいつの間にか起き上がっていて、同じ目線。 「って言うか、昨日あれだけ言ってんのに、朝一で疑われる俺って可哀想じゃね?」 「……だって、」 あの紗奈ちゃんに告白された訳でしょ? 何で、私??って、思うわよ。いや、本当に。酔いが醒めた今なら尚更ね? 私がオトコなら、絶対に紗奈ちゃん選ぶもん。 「俺は志保がいいんですけど?」 「え?」 「今、自分なら紗奈ちゃん選ぶ。とか思ってたろ」 ……何で解るのよ。このヒト。   「ちなみに。紗奈ちゃんは俺が志保の事好きなの、知ってたみたいだけどな」 「……ぇえっ!?」 ちょっと待って? じゃあ何?もしかして2次会に行く時は知ってた訳?? ソレで、矢野に送られる私に笑顔見せるなんて、 「志保?どした??」 「落ち込んでんの」 「何に?」 完敗。 確実に、紗奈ちゃんはイイ女だ。 「志保?」 可愛くて、性格も良くて、男から見れば守ってあげたくなる様な女の子。 でも、めちゃめちゃイイ女だ。 「矢野、今からでも遅くないよー」 「手遅れだろ?」 ……ん?? 「何度も言うけど、俺は志保が思ってるより、志保の事好きだから」 「……っ、」 あぁ、どうしよう。 私、こんなに可愛気ないのに。 「……でも、矢野って、守ってやりたい様な子がタイプって言ってなかったっけ?昔」 多分、どっちかって言うと私と反対の形容だと思うの。ソレ。 だってね?前の彼氏に「お前って独りでも生きていけそう」って言われたんだよ? 「解ってないのな?」 「何が?」 言って矢野を見ると、唇に柔らかな感触。 言葉を紡ごうとする私を遮る様に、何度かキスをして、 「俺から見れば、充分守ってやりたくなるタイプ。だよ」 そう笑って言う矢野は、何だかカッコ良くて。 私は、紡ぐ言葉を失った。 神様。 もし、想いの天秤。なんてモノがあったら、私、惨敗ですか? [終わり]
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