アメリカン・ナイトメア

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 そして私は閃いた。  彼らの視線を受けながら立ち上がり、おぉ、とどよめいた彼らに手の平を向け。 「静まりなさい、人の子よ。生憎と私は神の身、人の通貨は持ち合わせておりません。」  私の言葉でお金を持っていない事を察した彼らは僅かに暗い表情を見せたのだが。  全ては女神たる私の掌の上。 「ですが、知恵を授ける事は出来ましょう」  私の言葉で再び表情を輝かせた彼らに、私は神の宣告を行う。 「貴方、500円。持っているのでしょう?ならばそれで彼にジュースを買い与え、その対価として1ドルを受け取りなさい。 この場は罪を裁く場ではありません、貴方達の友情が試されていたのです……。 さぁ、人の子らよ。貴方達の美しい友情を私に見せて下さい」  私は穏やかな笑顔を浮かべながら両手を広げ、三匹の迷える子羊達へと告げた。 「……あぁ、なんと神々しいお姿。有り難う御座います」 「「有り難う御座います」」 「礼には及びません。さぁ、行くのです。貴方達の友情を引き裂かんとする悪魔を倒してしまいなさいっ!」  私はビッと自動販売機を指差し、少年達もその指示のままに自動販売機へと向かった。  そして私はその隙に逃げた。  いや、だって。いい歳して公園で女神ごっこなんかしてられませんし。  後日談になるけど、甥っ子から聞いた話。  その公園にはからかいがいのあるノリの良いねーちゃんが居ると噂になったようで。  私は散歩コースを変えた。 (了)
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