混乱と真実と2

4/8
前へ
/831ページ
次へ
------------------------------ ◆ 数日後 俺たちは優美の部屋へ向かった。 「んな神妙な顔すんな。大丈夫だ」 神妙な顔してるつもりはなかったけど、そう見えるのか。 優美は俺を見てどう思うんだろうか。 話を聞いて、どう思うんだろうか。 本当は会ったこともないんだよ……な。 触れたことも…ない。 でも俺は覚えてるんだ。 繋いだ指も、毎日してたキスも、触れた肌のぬくもりも…… 匂いも。 「………」 車椅子。 こんなもんに乗って直哉押されてるよりも、気持ちは走って駆けつけたいくらいだ。 怖いけど、それよりも会いたくて…… なのに出来ないこの体に正直イラつく。 「いいか?」 「あぁ」 優美の部屋だという扉の前。 掲げられていたプレートは吉岡優美で…… 正直、また繰り返しか… って気分と、これが現実。っていう思いの狭間にいた。 俺だってまだ受け止めきれていない。 でも… 優美となら、何回繰り返したっていい。 そうとも思う。 『コンコンコン』 「はい」 城ノ内がノックした音に答えた声。 生の優美の声に、こみ上げてくるものがある。 ヤバい。 冷静で居られる自信ねぇ。 「はい」っていうその一言だけで、心がぎゅうっと締め付けられた。 「元気そうだね」 そう言って入っていく城ノ内の後ろをついて入っていくかと思いきや、直哉は優美から俺が見えない位置で車椅子を持ったまま止まっていた。 不思議に思って見上げた直哉の顔は、見たこともないくらい深刻な顔してて…… きっと今、いろんな思いが交差してるんだと思う。 思わず上に手を伸ばし、グッジョブってしながら 「大丈夫だ」 そう言った。 そのとたんに動き出した車椅子。 覚悟決まったんだな。 「こんにちは優美ちゃん」 そう言いながら優美に近付いていく直哉。 優美…… 会いたかった。 「直樹!」 あぁ。やっぱり俺のことわかってる。 それだけでもう、ヤバかった。 「優美…」 触れたくて、もっと近づきたくて…… 思わず立ち上がった。 無理なのに…… あ… 案の定、まだバランスの取れない体はそのまま崩れ落ちて、見事に優美のベッドに上半身だけ乗る形で受け止められた。 あっぶね。 「ったく無茶すんな」 呆れたように言う城ノ内と 「大丈夫?」 心配そうに見てくれる優美。 打った腹は痛いけど、そんなのは優美の存在がそこにいるってだけで帳消しに出来る。
/831ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加