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今日、優美にすべてを話す。
不安が無いって言ったら嘘になる。
「優美ちゃん……」
「はい」
直哉と城ノ内が、本当の真実を1つ1つ優美に伝えだした。
顔色を変えることも無く、ただ黙って聞いている姿に正直俺の方が焦ってる。
頷きもせず、ただ黙って一点を見つめて…
「……だから今が本当だから」
直哉が締めくくった。
「そう…ですか」
優美は受け入れられるのだろうか。
戻ってきた事実も、俺のことは本当は知らないってことも…
「困ったことがあったら、なんでも言って。今の生活に戻れるようになんでも手伝うから」
今の生活…
ってなんだよ直哉…
お互いが知らないままでいた頃の生活になんて、俺は戻れそうもない。
「私は、吉岡優美なんですよね」
「あぁ。今はね」
優美の問いに答えたのは、城ノ内だった。
「です…よね」
お前さえよければ、俺は今すぐにだって斎藤優美にしてやりたいよ。
「焦ることはないから。ゆっくり考える事も必要だよ」
にっこり笑って言う直哉に、優美が切なそうな顔をした。
「ちょっと2人にしてもらえないか?」
「あぁ。なにかあったらすぐ呼べよ」
「おう」
すんなり出て行ってくれた2人に感謝だ。
「優美?」
「……直樹…私覚えてるよ。直樹の顔もその声も…」
2人の前で我慢してたって事が痛いほどわかった。
「……」
「だって私、覚えてる…。ほら。直樹のこの手の感触…」
手が少し震えてる。
俺の手にそっと自分の手を乗せて言った優美の手を、俺は思わずギュッと握りしめた。
俺だって忘れてない。
そう…だよな…。
混乱しないわけがないんだ。
「俺だって覚えてる」
「今までのは無かったことになるの…かな。それともこれも途中?」
俺たち以外の人からみたら、今までのはただの夢だって言うだろう。
でも…
俺たちは違う。
もしそれが頭の中だけの世界だったとしても…
本当はお互い知らないんだとしても…
「無かったことになんかしない。もしあれがあっちの世界のことだとしても、俺たちには事実なんだと思う。それに…」
思わず一呼吸置いて優美の頬に触れた。
「……」
「…優美と一緒なら、どこでも生きていける。あっちだろうとどこだろうと、お前が居れば…」
「……」
「だから…優美さえよければ、俺はすぐにでも斎藤優美になってほしい」
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