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城ノ内とリハビリ中、ザワザワとした雰囲気に、みんなが入り口の方を見た。
「おいおい。ずいぶんと大勢の客だな」
城ノ内が言うのも無理はない。
あり得ねぇことをしてる女がいる。
「うぜぇ」
「直樹さん。早くこの病院を出ましょう。最高のリハビリが受けられるように、最高のメンバーを揃えましたの。家に帰ってリハビリのほうが、精神的にもいいですわ」
はぁ?
なにをわけのわからんことを。
「こいつら何?」
大勢引き連れて……迷惑っつーこともわかんねーのか。
いい加減うぜぇ。
「直樹さんの為に揃えたのよ」
ってことは、こいつら理学療法士とかか。
「お前さぁ、俺が治ったらどーすんの?こいつらお役ごめんでクビにでも?」
「直樹さんの為ですもの」
はぁ。
これだから。
なんでも思い通りにするお嬢様。
いい加減、話し合わせるのも面倒だ。
病院に迷惑かけない為におとなしくしてたけど、逆効果だったみたいだし。
それに、そろそろ優美の機嫌も限界だろう。
「あんた俺の何を知ってるわけ?恩返しのつもりなら、迷惑なんだけど」
そう。こいつはパーティーで転んだところを助けたことのある女。
助けたのに、いきなり囲まれて、犯人扱いされたからな。
そのあと、spと親が謝りに来てたっけ。
所詮その程度。
「わっ、私はただ直樹さんの力になりたくて……」
はいはい。
あわあわして、泣くパターンだろ。
なんかこっちの世界に戻ってから、俺、冷静な分析だな。
「俺の力になりたいなら、近づくな。こういうのも迷惑。この人たちの再就職先ちゃんと考えてんの?先のことまで見据えらんねぇんじゃ、経営者はつとまらねーよ」
あ、ほら涙だ。
「経営なんて…なんで…」
あーもう。
「もし、直樹が完治したら、この人たちの勤め先はどこになりますか?それとも一生すごせる賃金でも渡すのですか?」
城ノ内がいった。
冷静かつ、冷めた言葉。
でも的確。
そして…
あの目で、女の後ろにいた奴に、無意識に話し出すように仕向けるあの行動をした。
「月100万。その男を自分のそばに置いておけるように、完治させない程度に見ろと。そうすれば生涯雇うと」
ひでぇ。
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