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◇
う……うまく切り抜けられたかな…
あっちの世界では、あんなにうまくやってたのにな。
今の私、きっとすっごく醜い。
他の女の子に触れてほしくない。
笑顔みせてほしくない。
触れていいのは、私だけのはずなのに…
さっきだって、私を選んでくれた。
守ろうとだってしてくれた。
でもなんだろう……
嬉しいのに
もやもやする。
「吉岡さん大丈夫?なんかこころここにあらずって感じだけど…」
リハビリの先生に声をかけられた。
「あ、はい。大丈夫です」
「集中しないと怪我するからね」
「はい」
わかってるけど
わかってるはずなのに
ダメだ。
集中……できない。
「体調悪いんで、今日はもう戻ってもいいですか」
素直に告げた。
「大丈夫?じゃあ戻ろうか」
「はい。すみません」
ゆっくりと歩く。
私はもう歩ける。
どうすれば、この変な気持ちから抜け出せるの?
リハビリ頑張ればいいの?
「俺なら不安にさせないのにな……」
「え?」
私の横を、いつでも支えられるようにとサポートしながら歩く先生の口からサラッと聞こえた。
俺なら?
って…
「ううん。なんでもない。少しゆっくり休みなさい」
「はい。すみません」
部屋に戻っても
カーテンを閉めてしまえば1人。
はぁ。
どうすればすっきりするの?
集中できるの?
信じてるのに不安になる。
なんで?
本当は、会ったこともない人だから?
本当の直樹がどんな人か、私わかってないんじゃ……
ううん。
直樹は直樹だよね。
今までと同じ。
どんなときも私を好きでいてくれて、守ろうとしてくれて……
じゃあなんでこんなに不安なのよ。
わかんないよ。
「直樹のバカ」
そうつぶやいて、布団をかぶった時だった。
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