どこまでも

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------------------------------ ◆ 「直哉にだって触られたくねーんだよ。俺だってずっと我慢してんのに」 なんか様子がおかしかった。 だから気になって来たんだ。 そしたら… あいつの頭に手を置いて、コクるみたいなことしやがって… ざけんな。 直哉にだって触れさせたくねぇ。 医者としてならともかく、あれは間違いなく違った。 優美を好きだっていう顔。 冗談じゃねーよ。 直哉が優美を好きだってのは知ってる。 それが終わったことではないのもわかってる。 だからこそ、触れられたくねぇ…。 「あっあれは急だったし…」 「急でもなんでも嫌なんだよ」 「…そんな大きな声ださなくても…」 優美が周りを気にしたそぶりを見せたから、俺は開けたままにしていたカーテンを、サッと閉めた。 「不安にさせたの俺なんだろうけど、不安なら不安って言えよ」 「……」 「……」 下を向いたまま何も言わない優美が、寂しそうに笑った。 「そう…だね」 余裕がないのは俺で… 誰かに取られるんじゃないかって…それが身近なやつなんじゃないかって…不安なのは… 俺。 それが言えない俺も俺だけど… 言えないくせに、言えってか。 あっちでは結婚までしてた女なのにな。 「病室であつーいラブシーンなんて見せないでねー」 は? カーテンの向こうから、同じ部屋のおばちゃんの声がした。 「私もラブラブしたぁぁい」 うへっ。 別の患者の声まで聞こえてきた。 なんだその冷やかし。 「直樹戻って。みんなの餌食になるよ」 餌食ってなぁ… 優美が下を向いたまま、小さな声で言った。 なんで、顔あげないの? 「あとで俺の部屋来て」 優美の耳元で伝えて、俺はカーテンを思いっきりあけた。 超営業スマイルで。 おばちゃんたちに何も言わせないように。
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