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もうすぐ俺たちはここを出る。
そうすれば嫌でも一端離ればなれだ。
また遠距離恋愛なんて…
出来るのか俺に…
出来るよな。優美となら。
出来ることならもう遠距離なんてしたくないけど、状況が状況だけに…な。
現実に戻った俺たちの現状は、あの時のままだ。
だから優美はまだ会社を辞めていないし、モデルだってやってない。
全てが今までの俺たちに追いつく事なんてあるのだろうか。
それとも、あれは夢でしたーって綺麗さっぱり忘れなきゃいけないんだろうか。
でも
忘れるなんて…
無理…だよな。
リアルすぎて。
結局そのループ。
なーんにも進歩ねぇの俺。
そんな風に考えながら、自分の病室の前へ来たときだった。
1人の男が、すごい形相で俺の方へ向かってきた。
あ…
「お前、斉藤直樹だな」
「あぁ」
あぁそっか。
こいつは俺のこと知らないんだっけ。
「遊び半分なら、妹に近づかないでくれ」
いきなり現れたかとおもったらそれかよ。
あぁでもそんなこと、あっちでもあったよな。
吉岡翔太。
妹大好きなアーティストであり、あっちでは俺の親友だった男。
やっぱり、リンクするところあんだよなぁ。
「こんなところでする話しじゃないから、入れば?」
「いや、用はそれだけだから」
おいおい…
それじゃこっちが困るんだ。
「俺は用があるから」
「は?」
「遊び半分なんかじゃないってこと」
「じゃあ完全に遊びかよ」
はい?
なんでそうなるんだよ。逆だ逆。
「入れよ」
否応なしに、病室へ招き入れた。
遊びな訳がない。
本気。
本気でこいつしかいないって思ってるんだ。
それをわかってほしくて
そして翔太には、俺のこともわかってほしくて…
ゆっくり説明した。
「そんなの理解しろって方が無理だろ」
「でも俺たちのなかではそうだったんだ」
「現実は違う」
「ここがどこだろうと、俺は優美以外考えらんないから。一緒に暮らしたいとさえ思う」
「あほかお前」
「どう言われても、それが俺の思い。誰にも渡したくないんです」
どうかわかってくれ。
そのときだった。
「入るよー」
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