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ゆっくりとドアが開いて、そっと顔をのぞかせたのは優美。
「は?え?お兄ちゃんなんでいるの?」
まーそうなるわな。
「ん?こいつに話しがあってさ」
「へぇ。もう仲良くなったの?」
だったらいいけどな。
「は?んな訳ないだろ」
ですよねぇ。
あっちでも、丸1日かけて酒飲みながら話したんだもんな。
そんな簡単にわかってもらえる訳ねーか。
コレが現実。
だよな。
「歩いてきたのか?」
「うん。リハビリがてらね。自分からやらないとさ、いつまでも甘えてらんなよ」
だから遅かったのか。
来ないかとさえ思っていたから、来てくれたことがものすごく嬉しい。
しかも、平然と俺の横に座ってくれたことが、これまたものすごく嬉しかった。
「お疲れ」
「うん」
そんな普通の会話さえ、今はすごく嬉しいんだ。
さっきまであんな顔させてたのにな。
「優美、お前東京帰るだろ?」
翔太が優美に問いかけた。
「あーうん。いろいろ片付けないといけないしね」
「まずはゆっくりしろよ。お前がいつ戻ってもいいように、家に手すりとか増やしてあるから、ゆっくりと元の生活に戻ればいいさ」
翔太…
「やだなにそれー。バリアフリーとかやめてよね。そういうのはお母さんたちが年老いたときに作ってあげてよ。どうせ私すぐ家出るし」
はい?
「なに言ってんだよ。まずは家でゆっくり普通の生活に慣れろ」
「無理だよ。私にとって普通の生活は、直樹と暮らしてることだもん」
おっとぉ。サラリと言ったなおい。
「それは現実の出来事じゃないだろ」
「私にとっては現実だもん。いろいろあったもん。すっぱり忘れて新しい生活するほうが出来ないよ。 いろいろこっちとは状況違うのはわかってるもん」
優美…
「とりあえず退院したら家へ戻るんだ。それから頭冷やしてゆっくり考えろ」
そう言い放って翔太は出て行った。
わかっては…もらえないな。今はまだ。
それよりもまず
この違いは何なんだか。
「ここに来るまでになんかあったろ」
だってさっきまでの表情と違いすぎだ。
「あーうん」
やっぱりか。
「何があった?」
優美を笑顔にするほどのなにかがあったんだ。
「城ノ内さんが…ね」
「城ノ内?」
まさかあいつにコクられたとか言うなよ。
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