ソフトクリーム事件

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 淡いスカイブルーの空は雲ひとつなく、新緑から深緑へと移ろい行く葉は微かに風に揺れている。  5月を迎えてから日増しに暑くなってきた西の王国。  そのため、城下の市では、冷たいジュースやアイスクリームの店に行列が出来ていた。  市の中央にある噴水広場。  そして、噴水を囲むように植えられた広葉樹。  その木陰に設けられたベンチでは、住民たちがほっと息をつきながら、束の間の清涼感を味わっていた。 「初めまして、こんにちは。ルミナの名前は、ルミナです」  ソフトクリーム屋の店員に、カウンターから頭だけ出したルミナが自己紹介を始める。  『初対面の人には、自己紹介をする』と基本プログラムにあったからだ。 「やぁ、こんにちは、ライアロウのお嬢さん。ソフトクリームが欲しいのかい?」 「うん。ルミナは暑いから、冷たいものが食べたいの。これで売ってくれる?」  蜥蜴の獣相を持つ店員が細い舌をちろちろさせて尋ねると、ルミナは硬貨を数えながらカウンターに置き、真剣な眼差しで店員の飛び出た大きな目を見つめた。 「もちろんだよ! はい、どうぞ。落とさないように気をつけて持つんだよ?」 「ありがとう」
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