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『歩きながら食べてはいけない』という基本プログラムと「気をつけて持つんだよ」という店員の言葉に従い、ルミナはソフトクリームに熱い視線を注ぎながらベンチまで歩き出した。
ベンチまで、後30歩。
「あ!」
足元への注意がおろそかになっていたルミナが、わずかに開いていた石畳の隙間に足を取られ、すっ転ぶ。
そして、ソフトクリームが放物線を描きながら宙を舞い――ひとりのライアロウのふくらはぎにべちゃっと当たった。
シアンからブルーへと美しいグラデーションを見せる液体が入った円筒状のふくらはぎに、真っ白な跡を残しながら地面に落ちるソフトクリーム。
沈黙が流れる。
倒れ伏したままのルミナに注がれる金と青の冷たい眼差し。
三呼吸分後、ルミナが顔だけ起こし、遥か高みにあるライアロウの顔を見上げた。
「初めまして、こんにちは。ルミナの名前は、ルミナです」
「あ?」
ルミナの意表をついた言葉に、無表情だったライアロウの顔が呆気に取られたように変わる。
構わず、更にルミナは真顔で問いかけた。
「ルミナ、ソフトクリームをあなたにぶつけたの。ごめんなさい。あなた、怒ってる?」
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