一人

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 一部の駐車場の上部は、流星となったとき新築し、別館としているが、 こちらは本館と違い、部屋を広く使っているため、2部屋のみの構成となっている。  通常、宿泊客は入口に近い駐車場へ車をよせ、フロントで受付をする。  無論スタッフが出迎え、場合によっては誘導を行う。  ちょうど浅井が車の入ってくる音を聞き、食事どころから駐車場を のぞいたとき、タクシーが入ってきた。  浅井は手を止め、出迎えのため表へ出る。  先ほど電話をもらった客だということは、到着時間から察しはついた。  タクシーに駆け寄り、後部座席のドアが開くと同時に浅井は深く頭を下げる。  「いらっしゃいませ」  頭を下げたまま、それこそ一瞬、浅井は止まる。  降りてきた女性の足に、目を奪われてしまったのだ。  すらりとして、程よい張り、世の男性なら一度は目をとめるだろう。  悟られないよう、ゆっくりと頭をあげると、足だけでなく 全体にバランスのとれた、スタイルの良い女性がそこに立つ。  あとから降りてきた男性も、年はとっているが、それを感じさせない エネルギッシュな印象を受ける。  つい浅井は言葉にする。  「女優さんみたいですね」 スタイルに合わせてなのだろう、観光に不向きな都会的な装いも 浅井の言葉を後押ししていた。  相手は素直な褒め言葉とわかったのだろう、その女性、 茅野美佐は、屈託なく笑った。  「ありがとう、お世辞でもうれしいわ」  「いえいえ、お世辞なんて・・・っと、お連れ様に怒られないうちに、 館内へどうぞ」  そのセリフを聞いた、茅野の連れである大池善三郎も言い回しも つぼに入ったのだろう、機嫌良く笑った。  「君、心得てるね。ああ、予約していた大池です」  「お待ちしておりました、荷物は私が持ちます。どうぞ足元を お気を付けください」 大池たちの受付をし、部屋へ案内したあと、待っていたように 厨房から女性スタッフが浅井へ駆け寄る。  「ね、さっきの女性、名前聞いた?」  実は浅井、芸能などにあまり興味ははなく、女性スタッフの質問の意味が よく呑み込めなかった。お客様の名前は予約者だけでいいだろう、と。
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