一人

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 それから大池と関係をもつようになり、仕事は以前より増えたものの、  美佐はかごの鳥でしかなった。  それだけ、事業家として大池の力は強かったのである。  ここしばらくは大池と会っていなかったので、美佐はこの旅行の 電話がくるまで油断していた。  大池と会う時には、例の嫌悪感からくるおう吐を抑えるための準備も あったはず、それすらできなかった自分にも腹立たしかった。  当の大池は、ベンチャー企業に投資して巨万の富を築き、一気に その世界で有名になった。茅野美佐一人くらいの人生、どうにも できるのである。  そこまでして自分の手に入れておきながら、美佐は数いる愛人の 一人に過ぎなかった。  しかし、一度手に入れたら独占したがるのも、彼のような男の 性格で、最近では大池のコネクション以外からのオファーも増え、 危機感を募らせていた。  そこで、美佐の機嫌取りに今回の旅行を計画したのだ。  だから、彼なりに美佐の機嫌を損ねないよう、注意を払っていた つもりだったがスケジュールが狂い続ける失態を演じていた。  だが、行ってみたいと常々言っていた悠院に連れてきていることで、 いくらは大丈夫だろうと、ここまでのことはあまり気にしていなかった。
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