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「……帰るぞ」
「どうして、ですか?」
「何が?」
「いえ、どうしてここにいるのかなって……」
「遅いから、迎えに行けって命令された」
と言った渉斐さんは先に歩き出す。
まだそんなに暗くはないこの時間帯……。
それなのに、わざわざ迎えをよこすなんて過保護にも程がある。
あたしだって大人なんだから、大人の女性なんだから……何だって知ってるんだから……。
経験だって……
「おい、麺つゆ?」
未だこの場から動こうとしないあたしを、渉斐さんが振り返る。
目線を下げて、瞼に滲みそうになってしまう涙……何だか自分が馬鹿みたいに思えた。
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