溺れる

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「いえ、何でもないです」  佐藤さんの言葉に川端さんの手が 私の肩から静かに離れていった。  同時に何とも言えない重い空気が 狭い給湯室に漂いだす。  逃げ出したいけど逃げ出せない、 そんな空気。 「ヤケド大丈夫でしたか? 着替えを何か用意させますね」 「いえ、本当に大丈夫ですから。 これくらい、すぐに乾きますよ」  私の頭越しに交わされる 2人が会話がすごく落ち着かない。 「相原さん、いつまでここに居るの? 川端さんも大丈夫みたいだし、 打合せ終わったから片してきて」  二人の間で迷う私に 佐藤さんの冷たい言葉が降り掛かってきた。 「あ、はい」  私は台拭きを手に慌てて給湯室を飛び出すと、 会議室へと戻った。 .
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