一時限目

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「私たちは守ノ宮学園風紀委員会執行部だ。学園の風紀を乱すのは止めてもらおう。部外者は直ちに学園外への退去を命じる!」  雫は城ヶ崎を睨めつけると、高らかにそう言い放った。  校舎の所々で黄色い声援が上がる。  眉目秀麗、成績優秀スポーツ万能な雫は男女共に人気が高いが、どちらかと言うと女の子の受けの方が高い。男言葉と、やたらと完璧な姿勢のせいで妙に目を引くのが原因ではないかと志朗は睨んでいる。 「ふん。この学園のルシファー・チャイルドか。ここは小等部から大学部まであるマンモス校とは聞いていたからな、相当数のルシファー・チャイルドがいるとは思ったが……。まさかこんな可愛らしいのを出してくるとは」   値踏みするようにジロジロ見てくる城ヶ崎に、雫は露骨に不快な表情を浮かべた。 「貴様! 雫ちゃんをいやらしい眼で見たな!」   後ろでボロボロだった男が元気よく立ち上がる。 「いいか! 雫ちゃんをあんな感じや、こんな感じで脳内補完、いや、妄想もとい想像していいのは俺だけだ! わかったかこの糞虫共!」 「お前も想像するな!」  雫の容赦ない一撃でオレンジ髪が、綺麗に三メートル近く吹き飛んでいく。その後に校舎にいる女子から物が投げつけられているのはご愛敬だろう。  そのバカなやり取りに、小馬鹿にされたと感じたのか城ヶ崎は拳を地面に叩きつけた。  爆音と共に粉塵が立ちこめる。 「言っておくが、俺たち熊上高業が用があるのは只一人。黒陽高の総長を倒した加賀峰志朗だけだ。隠し立てしないでさっさと奴を出せ!」   吠える城ヶ崎を後目に雫は、 「だ、そうだぞ志朗」 と、言って志朗に半眼で視線を移した。 「うぜぇ……」  げんなりしながらも志朗は雫の一歩前に出る。改造学生服達の視線が集中するが、臆した様子は微塵もない。 「言っとくぞお前ら。一回しか言わないからよく聞いとけよ。これ以上やるなら、この加賀峰―― 雫! うちの妹が黙っちゃいないぞ!」  大威張りする志朗の後ろで、鬼の形相の雫がゆっくり近づいて行く。  「志朗ちょっと話がある?」  満面な笑みには綺麗に青筋が立っていた。
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