98人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
「う、うん!」
わざとらしい咳払いをしてから、雫は城ヶ崎に顔を向ける。
城ヶ崎達の視線はどちらかと言うと足下に這い蹲っている志朗に注がれていた。
「こっ、こういう目に遭うぞ……」
足元から聞こえる歯切れの悪い声の主を、雫は冷ややかに見つめる。
「黙れ。少しは真面目にやらんか馬鹿者!」
「だいたい、お前の方が俺より強いじゃないか」
「そう言う事を言っているのではない!」
「うわ!マジ切れかよ」
二人のやり取りに唖然としていた城ヶ崎だったが、ようやく我に返ったのか再び地面に拳を叩きつけた。
二人の会話を遮るように爆音が上がり、風圧と衝撃波が二人を襲う。
志朗と雫は後方に投げと飛ばされるが、空中で絶妙にバランスを保と何事もなかったように着地した。
「誰が痴話喧嘩をしろと言った。貴様ら捻り潰すぞ」
怒りの形相で拳を引き上げる城ヶ崎に、二人は仕方がなさそうに視線を移した。その前を人影が遮る。
「貴様! 雫ちゃんに手は出させねーぞ」
いつの間にか復活した出雲が、蒼い炎を拳に宿して城ヶ崎の前に立ちはだかった。雫にしてみれば有り難いのか、足手まといなのか微妙なところだ。
「貴様なんぞ、雫ちゃんの手を煩わせる必要はねぇー!」
「失せろ雑魚が!」
飛びかかる出雲の炎の拳に、城ヶ崎の拳が迎え撃つ。出雲の炎が届く前に前方の空気が爆ぜた。一瞬で掻き消された炎と共に、雫の真上を吹き飛んでいく出雲の姿はまるで人間ロケットのようだ。
「空気を暴発……破裂させる能力か?」
最初のコメントを投稿しよう!