一時限目

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 無様に落下した出雲が無事そうなのを確認してから、雫は城ヶ崎に向き直った。 「いい目をしている。その通りだ。俺の力は空気を破裂させる。大気を伝播する俺の攻撃を防ぐことは不可能だ。分かったら大人しく加賀峰志朗を出せ」  にじり寄る城ヶ崎を見て、雫はわざとらしく志朗を指さした。 「隠し立てなぞしていないぞ。当人ならここに居るではないか」  露骨に顔を顰める志朗に視線が集中する。 「な……何だと? こいつが加賀峰志朗?」 「こんなアホ面が?」 「黒陽の萩村を倒したのが、こんな奴なのか?」  唖然とする城ヶ崎達の呻きのような台詞の後に、周りの学ラン連中の声が続く。  それを志朗は敢えて聞かない振りをする事にした。  明後日の方向を見ながら、 「何というか、あれはあいつが勝手に自爆しただけの話だ。俺の実力じゃないから噂に振り回されないように」  一人で相づちを打っている志朗を見て、城ヶ崎は鼻を鳴らして笑い出した。 「くくく。何の間違いか知らないが、貴様を倒せばこの界隈では俺達の天下と言う事だ」   「うわ、ウゼ。そんな時代錯誤なことを言う天然記念物がいるよ! マジ勘弁しろよ」  ゆっくり後退する志朗とは対照的に、城ヶ崎は有無も言わさない勢いで前進を開始する。 「とりあえずテメーは死んどけ!」
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