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大きく振りかぶった城ヶ崎の拳を、志朗は両手で何とかガードした。それでも勢いは殺せず数歩後退する。
「痛! ガードの意味がねぇ~。体重差ありすぎだ」
まともに受けた左手を痛そうに振りながら、志朗はさらに数歩後退した。
「咄嗟に防御出来たではないか。少しは鍛錬が役に立っているようだな」
雫は志朗の様子を見て、何故か満足そうに頷いている。
「どう言う事だ?」
その様子を城ヶ崎は釈然としない面もちで睨んでいた。自分の拳に目を移す。
ルシファー・チャイルド【 堕天使の子供】には様々な能力があるが、共通して備えている防衛能力があるとされている。
M・L(ミッシングリンク)シールド。
ルシファー・チャイルド【 堕天使の子供】は無意識下で不可視の障壁を張っているとされている。この障壁は一定レベルの攻撃を当人に届かせない不可思議な特性を持つ。精神力を何らかの形で変換して形成している様だが、その変換プロセスは全くの未知。失われた環を冠する理由はその為でである。
この障壁を破る効果的な方法は数少なく、対抗しうるのは同じ堕天使の子供しか無いとされる。
M・L(ミッシングリンク)シールドに対抗する方法は、同じルシファー・チャイルドの能力での一定レベル以上の攻撃が有効とされるが、それでも直撃を与えることは容易ではなく、M・L(ミッシングリンク)シールド同士の反発作用を利用した反動エネルギー、 すなわち打撃の衝撃で本体にダメージを蓄積させるのがポピュラーな戦い方だとされていた。
城ヶ崎の渾身の一撃。
“空爆”の一撃は人間を紙屑のように吹き飛ばす。一定空間内の空気を破裂させ、大気に衝撃を伝播させる指向性の爆風の直撃は、例えM・Lシールドを張るルシファー・チャイルドといえど、先ほどのオレンジ頭のように例外無く弾き飛ばす。
M・L(ミッシングリンク)シールド越しにダメージを蓄積させると考えれば効果的な能力と言えよう。
しかし、目の前のふざけた男は腕を痛がっているだけだ。
考えられるのは単純な理由は一つ。
何らかの能力を発動させたという結果だ。
問題なのは何の能力か皆目見当がつかない事である。
「今日はこのぐらいで勘弁するとか言うオチを希望だけど。どうかな?」
志朗は愛想笑いを浮かべながら、腕を痛そうに振っている。
「ちっ」
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