一時限目

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 城ヶ崎は振り上げた筈の自分の腕を、愕然と見つめた。肘より先が綺麗に無くなっている。何故か無くなった先から、砂のような物がサラサラとこぼれ落ちていた。 「うわあああ? 俺の、俺の腕が無くなってる?!」  絶叫と共に無くなった腕を押さえる。奇妙なのは、それが痛みによる叫びではく、腕の損失への恐怖の叫びでしかない事だ。  事を起こした外人は何事も無かったように歩き出す。   「……何だ?」   志朗は疑惑の視線を外人に向けた。  城ヶ崎は“空爆”を使った筈である。ただ殴るはずがない。だが、結果は“空爆”は無効化され腕を消失。  そもそもルシファー・チャイルドにはM・Lシールドと呼ばれる不可視の絶対障壁が存在するはずだ。  それをも易々と突破しての一撃。  並の堕天使の子供とは一線を画している。  淡々と歩く外人の前に、雫が颯爽と立ちはだかった。 「貴様、やりすぎだぞ」  睨み付ける雫を前に、外人は仕方なく歩みを止める。 「おいおい、命があるだけましだろ? 腕一本で止めてやったんだ。寛大な対応と思うがね?」   悪びれた様子もなく顔を向けるが、雫は睨んだままだ。  「ん? よく見ると、君はかなり美しい顔立ちをしているね? 大和撫子とは君みたいな女性を言うようだ」   外人は雫の顔をまじまじと眺めてから、値踏みするように全身に視線を向ける。 「俺の名前はフランツ・シーゼル。フランツと気軽に呼んでくれ。短い間だろうけどよろしく」  満面の笑みを浮かべて手を差し出すか、雫は無言でその手を払うと城ヶ崎の元に駆け寄った。 「大丈夫か? 通例、戦闘が始まれば、うちの教職員が救急車を呼んでいるはずだ。直ぐに到着する。それまではがんばれ」  介抱する雫を見てシーゼルは軽く肩を竦めると、視線を志朗に移した。 「嫌われたかな? この国では握手は友好の印では無かったかな?」 「相手によるさ。嫌われ度百パーセント。うちの妹は気難しいからな」  士朗は両手を広げて、大げさにジェスチャーしてみせる。 「ふははは! 馬鹿め! 雫ちゃんが貴様ごときと手を握るか」  いつの間にか復活した出雲が、何故か志朗の横で高笑いを挙げていた。  打たれ強さは学園一かもしれないと志朗は本気で思うが、鬱陶しさもそれに並ぶので安易に讃える気にはならない。
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