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二十五年前。
「やってくれる」
憮然とした面持ちで金髪碧眼の少女は呟いた。眼下には謙遜とした街並みが、ただ広がっているように見える。
池袋と呼ばれる街が彼女の任されたテリトリー【領域】であった。
しかし、少女にはその街が既にただの墓場に変貌したことが窺えていた。
「こんな場所でどのようにして事を起こすかと思ったが、ここまで用意周到に事が運ばれていたとはな」
闇夜に無機質な光に照らし出された線路を、正確にはその上に並走する電線を憎々しげに眺め、
「偽聖神殿。このような形で作り上げるとは。見事と言っておこう。だが、ことを成すのは我々だ。上前は撥ねさせてもらう」
そう言うと少女は踵を返した。その跡に累々たる死体と二人の男を残して。
少女の立ち去った凄惨な現場に残された二人のうちの一人、神父服の上に黒い外套を身に纏った眼鏡を掛けた男は、ゆっくりと煙草に火をつけた。
傍らで固まっているもう一人の神父服の少年を一瞥する。
「感想は?」
蒼白な顔の少年は、その言葉でようやく悪い夢から目を覚ましたようだった。
「あんなものと手を組むのは、いくら我々でも間違っています。いくら時間が無かろうと必ず後で災いを呼びます。そもそもあれは我らジューダス機関が滅ぼすべき敵ではありませんか?」
真摯に訴える少年を見て、眼鏡をかけた男は苦笑した。
「ツヴァイの連中に言わせれば、崇めるべき血族と言うことになるがね?」
「あれはカース・ブラッドです! 教会はその呼び名を認めていません! 何を勘違いして自らを『第二の生誕者』の血族などと名乗るのか分かりませんが、そもそもあれは吸血鬼と呼ばれる化け物ではありませんか!」
「まあまあ、落ち着きたまえリデロ君。戦力としては申し分ないんだ。今は相手の言い分も聞いてあげようではないか」
「しかし……」
言葉を濁すリデロと呼ばれた少年に、神父は優しい笑みを向けた。
「いいですか? 東方教会の連中はどう考えているかは知りませんが、我々はあれを奴らとの潰しあいの道具として有効に使えればいいのです。最終的に我々が目的を達成できれば過程を気にする必要は無いのですよ」
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