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「はいはい、嫌われ者は早めに退散しますよ」
シーゼルは志朗と同じように両手で大げさなジェスチャーをすると、その横を通り過ぎた。しかし、数歩進むと徐に足を止める。
「そう言えば、君らもルシファー・チャイルドだよな?」
「おうよ!」
何故か出雲が自信たっぷりに胸を張る。
シーゼルはそれを気にした風もなく、そのまま話を続けた。
「なら知らないかな? “天瀬深冬”と言う名を」
振り返ったシーゼルはぽつりとそう言い放った。
その言葉に、志朗の瞳孔が大きくに広がる。
「天瀬深冬? ルシファー・チャイルドでってことだよな? この学園のルシファー・チャイルドにはいないと思うぜ? 聞かないぜ、その名前。それとも今年の新入生か?」
首を傾げる出雲の横で、志朗の眼が険しく光る。
その様子をシーゼルは満足そうに見つめた。
「いきなりビンゴかな?」
「……」
「なら宝物の在処も知っているな?」
含みのあるシーゼルの言葉に、志朗の眼がいっそう険しくなる。二人の間に異様な空気が流れ出した。
「まて。何のことを言っているのだ貴様?」
城ヶ崎の応急処置を終えた雫が、不穏な空気を感じて駆け寄って来る。
「そうだぜ。何だ宝物って? こっちにも分かるように話せよ」
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