二時限目

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「それでは放課後から可能な限り勧誘を始めてくれたまえ。今年は例の馬鹿共のせいで、例年に比べ編入生が多い。できれば正規の風紀委員獲得に力を入れてくれ」  例の馬鹿者とは、一部の高校でルシファー・チャイルドの入学を拒否する学校が出始めたことを指している。危険分子はトラブルを起こす前にシャットアウトする姿勢だ。  現在、人権面で世論的に問題視されている事柄の一つだが、こういう背景のためルシファー・チャイルドの入学に寛大な守ノ宮学園などに入学が集中する。  今年のルシファー・チャイルドの編入率は前年度の三倍だ。 「最後に一つ。相手はルシファー・チャイルドだと言うことを忘れないように。もし相手とトラブルが発生しても被害は最小限にしたまえ。以上だ」  副会長が締めて話は終わった。  書類は全て雫に手渡されたる。かなりの束なので雫は一瞬眉を顰めたが、自分が一番新参者なので仕方がないと割り切ることにした。  しかし、その後、何故か肩を叩かれ、 「麻賀が居ない以上、君が仕切ってかまわん。この書類を君に預けるのは君が一番信頼できると判断したからだ」   と、真っ向から見つめられて何となく理解した。  そう。他の面子は信頼が無いのだ。ずぼらすぎて。  まだ、二ヶ月しか一緒に居ないが、この仲間のいい加減さは考慮すべきなのかもしれない。  唯一まともな風紀委員副長、麻賀修一郎は、現在、統合連盟会議と呼ばれる政府と地域学校間の定例会議に出かけてしまっている。本来、風紀委員長の志朗が出るべきものなのだが、当人は全く行く気がない。そもそも風紀委員長が志朗な時点で疑問が残る。  雫はキリッとした姿勢で、 「了解しました」 と、言って退室した。  直ぐに後を追った出雲が雫の持っている資料を奪うと、 「荷運びは任せてください!どこまでも一緒に運びますよ」  などと声をかける。続いて乙姫が退室し、志朗も出ようとすると、そこで会長に呼び止められた。 「加賀峰は残れ。話がある」 「……あっち関係か?」 「そうだ」  簡潔な答えに志朗は珍しく神妙な顔でドアを閉めて、会長の前に向き直った。  再び副会長が机にファイルを並べていく。  先ほどの資料と似ているが、今度は全員外国人だ。 「今年の高等部の留学生だ。各学年三人ずつ。そして、全員がルシファー・チャイルドだ」 「それは豪勢なこって」
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