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珍しく志朗が真剣に、一枚一枚丹念に資料を見ていく。
「名前も資料もいかにも偽装だ。この時期に各国がルシファー・チャイルドを送り込んでくるだけで余りに怪しすぎる。探索者と見て間違いないだろう。だが、正規の手続きを経ている以上、交換留学生を断る理由はない。」
何故か口惜しそうに副会長は資料を見る。
「限りなく黒に近い灰色と言う連中だ。諸外国が探索にくるのは初だが、注意するのに越したことはない」
会長のその言葉に、志朗は不敵な笑みを浮かべた。
「会長。こいつは確実に黒だ。こいつは深冬の名を知っていた。宝が有ることを確実に知っているよ」
志朗は手にしたファイルを指で弾いた。そこにはシーゼルの写真と名が記載されている。午前中の乱入者を一撃で黙らせた、強力なルシファー・チャイルド。
「全員が黒とは限らないが、宿舎に住み込む人間は夜に探りを入れてみるつもりだ」
「夢見をするのですか? 会長は常に結界を張られているのです。余りご無理をなさっては……」
会長の言葉に、副会長は渋い顔をする。
「それは俺も同意見。会長は夢幻結界の維持で常に力を使ってるんだ。無理はしなくていい」
志朗は手早くファイルを集めると、出口に向かった。
「怪しい奴は俺が何とかするさ。それが俺の仕事だしな」
「無理はするなよ。その為の風紀委員会だ」
「了解」
志朗は会長にわざとらしい敬礼をしてから、そのまま部屋を出ようとした。
「まて加賀峰」
副会長は呼び止めるとファイルを別に一つ渡した。
「まだ隠し球でもいるのか?」
渡されたファイルには新入生の女子高生が記載されていた。眼鏡を掛けた、ショートカットのはにかんだ表情の少女が写っている。名前は矢津房美咲と書かれていた。
「以前、幽霊女の話をしていたな? 眉唾話だから気にしていなかったが、ちょうどいい人材が入ってきた」
「堕天使の子供?」
「霊視能力を持っているらしい。それ自体も眉唾話だがな。幽霊少女の正体に白黒つけるのには役に立つだろう」
「病気じゃ無いことを祈るよ」
そう言うと志朗は手を振って部屋を出た。
「内緒話は何だったのだ?」
生徒会室から出て、はじめの突き当たりに雫が待ち伏せていた。
正確には、出雲と乙姫の三人だが。
「おまえら暇だな。昼休み終わるぞ? さっさと飯食いに行こうぜ?」
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