二時限目

6/28
前へ
/155ページ
次へ
 珍しく志朗が真剣に、一枚一枚丹念に資料を見ていく。 「名前も資料もいかにも偽装だ。この時期に各国がルシファー・チャイルドを送り込んでくるだけで余りに怪しすぎる。探索者と見て間違いないだろう。だが、正規の手続きを経ている以上、交換留学生を断る理由はない。」  何故か口惜しそうに副会長は資料を見る。 「限りなく黒に近い灰色と言う連中だ。諸外国が探索にくるのは初だが、注意するのに越したことはない」  会長のその言葉に、志朗は不敵な笑みを浮かべた。 「会長。こいつは確実に黒だ。こいつは深冬の名を知っていた。宝が有ることを確実に知っているよ」  志朗は手にしたファイルを指で弾いた。そこにはシーゼルの写真と名が記載されている。午前中の乱入者を一撃で黙らせた、強力なルシファー・チャイルド。 「全員が黒とは限らないが、宿舎に住み込む人間は夜に探りを入れてみるつもりだ」 「夢見をするのですか? 会長は常に結界を張られているのです。余りご無理をなさっては……」  会長の言葉に、副会長は渋い顔をする。 「それは俺も同意見。会長は夢幻結界の維持で常に力を使ってるんだ。無理はしなくていい」  志朗は手早くファイルを集めると、出口に向かった。 「怪しい奴は俺が何とかするさ。それが俺の仕事だしな」 「無理はするなよ。その為の風紀委員会だ」 「了解」  志朗は会長にわざとらしい敬礼をしてから、そのまま部屋を出ようとした。  「まて加賀峰」  副会長は呼び止めるとファイルを別に一つ渡した。 「まだ隠し球でもいるのか?」  渡されたファイルには新入生の女子高生が記載されていた。眼鏡を掛けた、ショートカットのはにかんだ表情の少女が写っている。名前は矢津房美咲と書かれていた。   「以前、幽霊女の話をしていたな? 眉唾話だから気にしていなかったが、ちょうどいい人材が入ってきた」 「堕天使の子供?」 「霊視能力を持っているらしい。それ自体も眉唾話だがな。幽霊少女の正体に白黒つけるのには役に立つだろう」 「病気じゃ無いことを祈るよ」  そう言うと志朗は手を振って部屋を出た。 「内緒話は何だったのだ?」  生徒会室から出て、はじめの突き当たりに雫が待ち伏せていた。  正確には、出雲と乙姫の三人だが。 「おまえら暇だな。昼休み終わるぞ? さっさと飯食いに行こうぜ?」 
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加