二時限目

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 志朗は手に持ったファイルを丸めると、パンパンと手で叩きながら歩き去ろうとしたが、 「たまには親睦を深めようよ?」 と、にやにやしながら弁当を振っている乙姫に止められた。         ◇  志朗達は昼食を中庭で済ませることに決めた。  守ノ宮学園は小、中、高、大学部と揃ったマンモス校であり、広大な敷地には様々な施設や各クラブ専用グラウンドに、情操教育の為の庭園や花壇などの自然が溢れかえっている。  ゆとりのあるスペースは数多いが、その分、人気のスポットには人が多い。  校舎間にある中庭も人気の一つなのでかなりの人間が居たが、志朗達は並木道近くの銀杏の木の裏のスペースを確保することができた。  芝生に座って昼食を開始すると、一口も食べる前に出雲が志朗に食ってかかっていた。 「志朗君。ここまで言っているのに弁当のトレードに答えられないのかね」 「残念だな。いくら何でも購買のパンではトレードはしかねる」  ひたすら志朗の弁当を狙っている出雲のせいで、なかなか昼食が進まないでいた。  その様子を面白がって見ていた乙姫と雫だが、流石に10分近くそのやり取りを見ていると微妙としか言いようがない。 「はぁ……いい加減にしろ出雲。私の弁当を分けてやるから我慢しろ」   根負けしたのは雫の方だった。弁当箱の裏蓋におかずを分けていく。 「うわぁー。ずっこい出雲。私も雫チンの弁当食べたい」  
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