二時限目

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 置いた先から乙姫がおかずを抓んでいく。 「うわ! 何すんだ乙姫! 貴重な雫ちゃんの手料理を」 「わはひの弁当食べていいよ」  取り乱す出雲に乙姫は自分の弁当を差し出した。中身はほとんどすでに無い。 「俺が食いたいのは雫ちゃんの手料理であって、乙姫のおかんの料理では無い!」 「酷いな。うちの母さんの料理もまあまあなのに。でも、正直、雫チンのが圧倒的に美味しいけどね。不思議不思議」  そう言いながら、再び雫のおかずを口に運ぶ。 「貴様! それ以上食うんじゃねぇ!」 「出雲は志朗に分けて貰いなよ。士朗の弁当も雫チンが作ったんだから」  現在、雫が加賀峰家の台所事情を仕切っている。もちろん昼食は弁当にして昼食代は浮かせている。よって、志朗の弁当も雫の手料理なのだが、出雲同様付け狙う輩は実は多いい。 「一つ言っておこう!」  志朗は唐突に弁当片手に立ち上がった。 「我が妹は正直な話し料理の腕だけは天下一品だ! 毎日変わるメニューは俺の娯楽の一つ! マジ、絶対やんねぇー!」  高笑いと共に弁当をかっこむ。その姿を悔しそうに眺める出雲。そして、その隙に雫のおかずを乙姫がかすめ取っていく。
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