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「そんな物の為に命賭けてどーすんだよ!」
少女は一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに笑顔を作る。
「ごめんね。約束、守れそうに無いや」
「何、弱気になってんだ! すぐ救急車を呼ぶから待ってろ!」
立ち上がろうとした少年の手を、少女は力無く握った。
簡単にふりほどけるが、それをさせない意志力を感じる。
「ごめんね。本……当に……ごめ――」
「……?」
そのまま動かなくなった少女を少年は愕然として見つめた。死と言うものを身近で感じた事が無かった少年にとって、それはあまりにも唐突で不条理な出来事だった。
その出来事が――幼い少年の心に楔となって打ち込まれ、抜ける事の無い鈍い痛みとして残り続ける。
――そして、少年は義務でも約束でも無い、ただ身勝手な誓いを立てた――
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