一時限目

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 半年前、母が地震の倒壊事故に巻き込まれて死んでから、父が雫を引き取ることになった。    それ以来一緒に暮らしている訳だが、十年近く顔を合わせていなかった為か違和感がある。  原因は取っ付きにくい性格と、客観的に見ても美しい部類に入る顔立ちのせいだ。  単純に自分の妹には見えないのである。 「どこから突っ込んでいいんだか。この大騒ぎの中、眠っている方を誉めるべきなのか?」  ため息混じりの声を聞いて、志朗は眉を寄せた。ようやくクラスの異変に気がつく。  クラスメイトが全員窓にへばりついているのだ。 「外?」  志朗もようやく校門前に集まる人影に気がついた。見知った人影が一人いる。 「おっ? 出雲がいる……ってことは」 「風紀委員の出番だ。堕天使の子供(ルシファー・チャイルド)絡みだ」  堕天使の子供(ルシファー・チャイルド)。  西暦2015年を起に、突如世界中に特殊能力を扱える人間が出現した。理由、原因、未だ不明。世界中の研究機関でその謎を究明するのに躍起になっているが、結果を出したところは皆無とされている。ただ普通に生活していた人間が、突如特殊な能力が開花するケースが多発した。  出現当時、その力で世に貢献した者がいたことで、天の使い、代行者等と呼ばれていたが、後にその驚異的な力で凄惨な事件を起こした能力者が子供達であった為、人々は畏怖と恐怖を込めて堕天使の子供(ルシファーチャイルド)と呼ぶようになったと言う。
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