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「と、言うことで行くぞ志朗」
そう宣言すると、雫は笑顔で志朗の肩をがっしりと掴んだ。
「はぁ? な、何で? 出雲が出てるじゃねぇーか? 俺の出番はナッシング?」
露骨に嫌そうな顔をする志朗を見ると、雫の眉がゆっくりとつり上がっていく。
「今回の乱入者も……志朗目当てだ。それに風紀委員なら仕事をしろ!」
「いや、ほら、今、授業中だし……」
わざとらしく志朗は教卓に顎をしゃくった。その先には外の騒ぎで騒然とする教室の中、ため息をついている気弱そうな現国の教師がいる。
「先生!」
雫は声を荒げると、つかつかと教卓に歩み寄っていく。
「兄を連れて行くが異存は?」
雫に睨まれた哀れな教師は、蛇に睨まれた蛙のように息を呑んだ。
美人に凄まれると言うのは、思ったより脅迫観念が高い。
もともと気弱そうな教師はこくこくと頷く事しかできなかった。
「と、言うことで行くぞ志朗」
先ほどと変わらない台詞を言いつつ、雫は素早く志朗の前に来ると襟首を掴む。
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