私達の選択

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  ソレで、いい。とは?? 「別に付き合う。とか、恋人同士。とかじゃなくてもいいです」 「いい、って」 いいの?? 「それに、付き合う。とかになると、先輩踏み止まって、何か悪い方向にいきそうだし」 「藤谷くん。超能力者みたい」 「やっぱり」 好きなのは、本当。 ソレは、本当に嫌って程に解った。 でも、だからって簡単にはいかないのが、私だったりもする。 「とりあえず、先輩が俺を好きならいいです」 「はぁ」 「だから、たまにはデートしたり、飲み行ったり、して下さいね?」 そして、ソレを藤谷くんは解ってる。 解ってくれてる。 凄い。 「あと、今日も泊めて下さい」 「……ん??」 「仕切り直し」 「や、何か、矛盾してない?ソレって、」 「嫌なら抵抗して下さい」 「っ、あの、ねぇ!」 抗議の言葉を選ぶ私に、小さな笑みを見せる。 「卑怯者」 抵抗なんて、させないクセに。 って言うか、出来ないし。 「痕、」 「はい?」 「痕残すの、禁止ね?」 「見えないトコならいーですか?」 「…………うー、ん」 って言うか、コレ。 付き合ってる。って状況と、何か違うの? 「カタチに縛られない分、少しは楽でしょ?先輩」 「私の脳内に盗聴器か何か仕掛けた??」 「いや。普通に先輩、解り易いし、」 ふと絡めてきた指。 そのまま手を繋いで歩く。 「ねぇ?」 「はい?」 「先輩呼びのまま?」 「っ、あー。戻ってました?俺」 「うん」 空いてる方の手で、口許を押さえて顔を逸らす姿も可愛い。 「結構、いっぱいいっぱいなんですよ」 いつか、私と藤谷くんもバランスとれるのかな? 一緒に歩いていて、自然に見える日、来るのかな? 「見せ付けてんじゃねぇぞ、こらぁ!」 ふと、響いた酔っ払いの声。 覚束ない足取りでフラフラしながら、こっちに向かって吠える。 「え?私達?」 「そうじゃないですか?」 特に相手にもせずに歩く藤谷くん。 そんな私達の背後から、まだ吠える声が聞こえた。 「見えるんだ」 「はい?」 「コイビト同士、に?」 「彩夏さん?」 あ、名前呼びに戻した。 「へぇ。見えるんだ」 「……って言うか、」 「うん?」 「いつか、なって下さいね?俺の彼女に」 言う藤谷くんに、笑顔だけ返す。 そのいつかは、 もしかしたら、そう遠くないかもしれない。 [終わり]
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