想いの熱量

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冷静な自分。 情熱的な自分。 そのバランスを上手くとれる人なんて居るんだろうか? 今より若い頃、今よりずっと情熱があった。 いつからか、情熱的で居るよりも冷静を選ぶ自分が居た。 その方が、楽だったから。 想いに、自分に、振り回されるのが、辛かったから。 もしかしたら、単なる「逃げ」なのかもしれないけど……。 想いに振り回されるのは、もうゴメンだ。 「先輩、俺の事好きでしょ?」 突然の後輩の言葉に、僅かに時間が止まる。 その意味を図りかねて、とりあえず、 「うん。好きよ」 と答えてみた。 「やっぱ、余裕ですよね?」 「は?何??」 「全然、動揺しないじゃないっすか?瀬戸さんに言ったら、結構、いいリアクション返ってきましたよ」 おい、こら。 「人をからかって遊ばないの」 「別に、からかってる訳じゃないですけど、」 充分、からかってるって。 まぁったく、最近の若い子は。 「でも、そっか。先輩、俺の事好きなんだ」 「そーね」 今更、その程度で動揺もできないわよ。 何年セクハラ上司を笑顔でかわしてきてると思ってるの? 「じゃあ、知ってます?」 「何を?」 そんな顔して、「好きでしょ?」なんて聞かれても、ねぇ? 「俺、先輩の事好きなんですよ」 …………。 本当、何がしたいのかしらね?この子は。 「そう。有難う」 「あ、先輩、冗談だと思ってません?」 可愛い顔で覗き込んでくるから、つい頭をなでる。 「はいはい。私の事好きなら、早くその書類まとめてね?」 「先輩。俺、子供じゃないですよ?」 「うん。解ってるよ」 でも、私から見れば「可愛い男の子」な訳よ。 だって6歳も年下の子よ? 「さ、会議始まるよ」 「あ、ちょっと、先輩!」 藤谷孝也。 可愛い、可愛い後輩。 * * * で。 仕事帰り、いつもの居酒屋で、 「浅海。オレの事、好き?」 本日二度目の質問。 「好き好き、大好き、めっちゃ好き」 そう答えれば、聞いてきた奴は大爆笑。 同期の、伊藤雄一。 「何よ?って言うか、その質問、流行ってるの?」 「いや。つぅか、お前。本当動じないのな?」 「何をどう動じれ?っての?」 って言うか、雄一相手じゃ、尚動じようがないって。 「まぁ、オレならいいけど。藤谷には少しくらい動じてやれよ」 「は?」 「好きです。言われてんのに、笑殺だもんなぁ」 「何?聞いてたの??」 悪趣味っ!!
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