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なんとなく、書きたくなった。
思い出話。
冬の日。
遠くへ行ってしまったいつかの日。
灰色の薔薇に出会った。
僕はそいつのことを何も知らない。
名前も知らない。
ただそこにいたそいつを見ていた。
そいつは薔薇なんかじゃない。
灰色の、薔薇みたいなそいつに、
僕は何を思ったのか。
今ではもうよく覚えていない。
でもそいつは確かにそこにいて、
今はどうなっているかわからない。
初冬の冷たい風が吹いていたことだけ
覚えている。
それからそいつがどうなったか
僕は知らない。
そいつも僕がどうなったかは
きっと知らない。
結局そいつが何だったのかは、
調べればきっとわかるだろう。
でも、知ってしまったら、
何かが壊れてしまう気がして。
現世に迷い込んだ灰色の冷たいファンタジー
そんなそいつが
儚く消えてしまうのが嫌で。
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