第1章

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なんとなく、書きたくなった。 思い出話。 冬の日。 遠くへ行ってしまったいつかの日。 灰色の薔薇に出会った。 僕はそいつのことを何も知らない。 名前も知らない。 ただそこにいたそいつを見ていた。 そいつは薔薇なんかじゃない。 灰色の、薔薇みたいなそいつに、 僕は何を思ったのか。 今ではもうよく覚えていない。 でもそいつは確かにそこにいて、 今はどうなっているかわからない。 初冬の冷たい風が吹いていたことだけ 覚えている。 それからそいつがどうなったか 僕は知らない。 そいつも僕がどうなったかは きっと知らない。 結局そいつが何だったのかは、 調べればきっとわかるだろう。 でも、知ってしまったら、 何かが壊れてしまう気がして。 現世に迷い込んだ灰色の冷たいファンタジー そんなそいつが 儚く消えてしまうのが嫌で。
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