第1章

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8. 子供 ヒトミと対面した日から、私は出来るだけ一人で家にいないようにしていた。 一人の時間は、私に孤独と恐怖を増幅させる。 何も知らないしげちゃんの携帯に電話を掛けた。 「もしもし、しげちゃん、今どこにいる?」 「あ、えっと新宿だよ。」 「私も今からそっちに行ってもいい?」 「あ、いや、あの、」 「え、何?行っちゃダメ?」 「いや、ダメじゃないけど、あの……今、卓也といるんだ。」 卓也は、しげちゃんの子供の名前だ。 「だから、来ない方が良いかもしれない。」 「……うん、分かった。今から行くね。」 「え?来るの?」 「うん、行く。どこにいる?」 私の中の血が、急に熱くなって騒ぎ立てた。 私は、今、とても傷つきたい気分だった。 しげちゃん達は、靖国通り沿いにあるファミレスにいた。 「ほら、卓也、ご挨拶しなさい。」 「こんにちは!」 純粋無垢な笑顔がこっちに向けられた。 「あ、こんにちは。」 私は少し気後れしながら、何とか顔を緩ませて挨拶した。 「ね、お父さん、チョコレートパフェ食べたい!」 卓也くんは確か、幼稚園年長位だったと記憶している。 しげちゃんの携帯の写真で見た時も同じ事を思ったが、卓也くんはしげちゃんの生き写しのようにそっくりだった。 きっとしげちゃんも幼い頃はこんな顔をしていたんだろうなぁ。 卓也くんは、しげちゃんとヒトミさんとの間で育んで出来た愛の結晶。 その愛の結晶が今、私の目の前で目を輝かせてチョコレートパフェを待っている。 この現実を私は直視出来なかった。
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