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7. 動揺
喫茶店を後にしてから、家に辿り着くまでの記憶がない。
私は今日、初めてしげちゃんの妻、ヒトミと会った。
確かに、妻は存在していた。
当たり前の事だ。
しかし、今まで写真や話しの中でしか彼女の存在を見出して来なかった。
それが今日、生身の人間として突如私の前に現れた。
私は、突然、現実を突き付けられたような気がした。
私はしげちゃんと一緒にいると、しげちゃんに家庭がある事をたまに忘れそうになる。
いや、むしろ私の頭の中で勝手に家庭を消去していたのかもしれない。
ヒトミとしげちゃんには、私には知る由もない2人だけの歴史がある。
夫婦の絆がある。
私は、今日、ヒトミを前に確実に大きな敗北感を感じていた。
私はその敗北感を隠す為に見栄を張り嘘を付いた。
私は、この途方もない嘘を、一体どう収束したら良いのか回らない頭で考えていた。
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