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「待って」  迷彩パーカ姿になったサイコが、タツオと瑠子(るこ)さまの後を追ってきた。タツオはブナの巨木にもたれかかって叫んだ。 「散開命令が出ているだろ。サイコは誰か別なやつと組んだほうがいい。ジョージなら、ぼくとくるより安全だ」  足元に滑りこんでくると、東園寺(とうえんじ)家のお嬢さまがいった。 「逃げるためにきたんじゃないわよ。瑠子さまをハイキングに誘ったの、わたしでしょう。タツオだけだと頼りないから、瑠子さまをお守りしにきたの」  サイコがバックパックから、スティック状の道具を抜いた。この緊急事態に口紅だろうか? くるくると回転させて、自分の顔にぬりたくる。戦闘に向かう未開の部族のように顔にまだらの影ができた。 「肌荒れしない自然素材だけでできたシャドーなんだ。瑠子さま、目をつぶって」  サイコは森のなかで白い顔が目立たないように瑠子さまにもシャドーを塗っていく。
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