115人が本棚に入れています
本棚に追加
49
山の斜面から乾いた銃撃音が響いた。あの音はジョージとテルの74式突撃銃だろう。ぱんぱんと軽い発射音は、クニの77式自動拳銃だ。タツオが手にするものと同じ進駐官制式拳銃だった。
タツオは叫んだ。
「5分ねばってくれ。サイコがスクランブルを依頼した」
クニの叫び声が林の奥から届く。
「こんな山奥のどこに空港があるんだ」
タツオは叫び返した。
「山荘にVTOLがあるらしい」
「すげえな、どんだけ金持ちなんだよ。垂直離着陸機か」
タツオも林のなかに向かおうとした。斜め右上空から、羽虫(はむし)のようなかん高いローター音が聞こえた。同時に目の前に小型の無人ヘリがあらわれる。横飛びに身体(からだ)を投げ出して、一回転するとタツオは伏射の姿勢をとった。77式の照準に丸い機影を捕らえる。2発ずつ2度射撃した。銃弾は見事に本体に当たり花火が散ったが、小型ヘリは何事もなかったかのように上空に戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!