1 嘘の始まり

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「ね、クリプレのアルバム買った?」 「ううん、でもネットで聴いたよー」 「そうそう、全曲上がってたもんね」 自宅に帰る途中、秋は渋谷駅のホームでそんな女子高生達の何気ない会話に耳を傾けていた。 電車を待つサラリーマンやOLも、スマホで気に入った音楽や動画をダウンロードしている。 それが悪い――と、秋は思わない。でもその軽さが、音楽をただ消費されてゆくだけのものにしている。そんな気が、していた。 でも電車内にアイドルグループの吊り広告が飾られているように、消費世界に向けた音楽の売り方も確実にあって。 秋が高校の教室で友達のために作った曲は、いつの間にかヒットチャートを賑わすようになり――気づけば秋達は、全てを手にしていた。
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