1 嘘の始まり

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それからヘリコプターで東京上空を一周してから、秋達はお祝いパーティーが開かれるホテルへと向かった。 ……と同時に、ホテル前に一台のバンが乗りつけられ、その中からタキシードを軽く着崩した高樹総一郎プロデューサーが現れる。 高樹はかつてアマチュアバンドだったクリプレをメジャーデビューさせた、敏腕音楽プロデューサーだ。 「よ。スタッフみんな、早くお前達を祝いたがってるぞ。秋、お前のこともな」 「……」 クリプレがアルバムV3を達成したのかよほど嬉しいのか、高樹は余裕たっぷりに話しかけてくる。 しかし秋の態度はひどく冷めていた。 「……瞬、ありがと。今日は楽しかったよ」 「パーティー、行かねーのか?」 「ああ」 秋はそのまま、高樹を無視して前を通り過ぎようとする。 高樹は高樹で秋の行動などとっくに予想済みだったのか、 「世界平和、書けたか?」 「………!」 と、わざと挑発的な笑みを浮かべた。秋はその質問に答えることなく、1人ホテルを立ち去っていく。 「……で、うちの天才君は、今度は何で悩んでんの?」 「アイツはほら、そもそもこういう売れ方したくなかった奴だから……」 秋の背中を見送りながら、哲平の質問に答える瞬。 もちろんプロデューサーである高樹にしてみれば、秋が抱える悩みなど甘っちょろいものでしかない。 「音楽なんて、売れなきゃ意味がねーんだよ……」 「秋はヤなんだよ。消費されてくことが……」 それでもやはり瞬は、秋に対し同情的だった。 今の世の中は、いつでも、どこでも、簡単に音楽が手に入る世界だから。
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