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仕事関係の電話をなんとか切り上げ、待合室に行くとそこに美桜の姿はなくマサトがいるだけだった。
「美桜は?」
「さっき呼ばれて、一緒に話を聞こうかって言ったんだが」
「あぁ」
「『一人でいい』って断られた」
「そうか。中に入ってどのくらいだ?」
「電話が掛かって来て、すぐだったから10分くらいだな」
「そろそろ、終わる頃か」
視線を診察室のドアに向けた瞬間、タイミング良くドアが開いた。
診察室から出てきた美桜は、なんだか複雑そうな表情だったけど俺の姿を見つけた途端、まるでその表情を隠すかのように笑顔を浮かべこちらに近付いてくる。
「どうだった?」
尋ねた俺に美桜は
「たいしたことないって」
そう言って微笑んで見せた。
「風邪か?」
「……うん。まぁ、そんなものかな」
「そんなもの?」
「帰ってゆっくり話すから」
美桜はそう告げると
「あっ!! 私、お薬貰ってくるから」
まるで俺から逃げるようにその場から立ち去ろうとした。
「姐さん、薬なら自分が取ってきますよ」
マサトの言葉に
「大丈夫。自分で貰ってくる」
にっこりと微笑んで答える。
薬が処方される窓口にパタパタとかけて行く美桜の背中を俺は見つめていた。
「蓮」
「あぁ」
俺とマサトは視線だけで会話をし美桜の後を追った。
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