プロローグ

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車内にいた者たちには一瞬、何が起きたか分からなかっただろう。 鼓膜をつき破るような轟音の後にワンテンポ遅れて襲っきたのは、放り投げられたかの様な浮遊感。 視界が滅茶苦茶になる。 (敵襲だ……)  石川がそう判断したのは、完全に静止してからの事だった。 「地雷(IED)を食らったか。ずいぶんと炸薬の量を増やしているな。車体がひっくり返っている」 後部座席から声がする。 二人が振り向くと、ひょろ長い井山が天井に転がっていた。 シートベルトをしていなかったのか、爆発の衝撃をもろに受けたらしい。 額から血を流している。 だが、相変わらずメガネとパソコンは肌身離さず持っていた。 出血もさほど多くないのでそれを見た2人もあまり驚かない。 「ンなもんわかってるって。ほら、PCいじってねーで銃取ってくれ。営業開始、営業開始。お客様のご来店だぁ!」  足をバタつかせながらシートベルトを外す景山。 久しぶりの戦闘に興奮している様だ。 石川も同様にシートベルトを外すと、ひっくり返った車内から外の様子を見た。  どうやらこの車両は、爆発を食らった後に、急停車した装甲車に激突したらしい。
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