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そうだが、と続けたいところだったが、ヒトミさんの黒い目が続けさせてくれなかった。 「……先生、怖いんですか? 私の、事」  曇り空の隙間から現れた真昼の太陽に目をやられた私は先日の事をも瞼で隠し、昼食を取ろうと手荷物を置いた後ろへと振り向く。 今日の昼食は売店で買っておいたパンが二つと缶珈琲だ。 ずっと独身の僕はこれに慣れているし、好きなのだ。  怖いんですか、私の事。  また、思い出してしまった。 かき消すようにパンの袋をわざと大きな音を立てるように開けても無意味だった。 「……怖い、なぁ」 「私もです」 「ぐっ!?」  一口パンを口に入れたところの突然の声にむせてしまった僕にその声の主は冷静の僕の缶珈琲のプルタブをかしゅっ、と開け、手渡す。 なんとか詰まった喉に珈琲を流した僕は安心の息を吐いた。 「大丈夫ですか? 先生」  ヒトミさんだった。
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