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サワサワ…
風が吹いて、空気が湿った臭いがした。
「雨になるかな…」
いつのまにか分厚い雲が浮かんでいた空を見上げ呟いた。
休憩でもなければ外に出ることもないので、朝と空模様が変わってることは良くあることだった。
「……」
煙草に火をつけ、紫煙を燻らせる。
(あの後…、鞠を病院連れてって、ケーサツとか入ったんだよな…。)
対応は父親がしてくれたが、はじめて警察沙汰になった。
母親が鞠音と過ごすことは限界だった。
両親や周りは鞠音を病院にいれたがったが…。
そんな事をしたら鞠音の存在が社会から消えてしまうような気がして、まだたかが16歳の高校生だったのに二人で暮らさせてほしいと言った。
父親は俺が今度はどうにかなってしまうんじゃないかとか、俺の将来の事を気遣って反対したが、『問題が起こったら必ず病院に入院させる』と言う条件で折れてくれた。
(あれが良かったのか、……解んねえけどな…。)
今思えば、意地にならずに鞠音を精神病院に入れて置けば、余計な傷を増やすこともなかったのかもしれない。
結果的に『問題』は起こって、鞠音は病院に入院することになった。
鞠音の事を想っていたのは事実だが、純粋にそれだけじゃない。
自分の我儘だったんじゃないかとか、エゴだったんじゃ無いかとか。
単純に問題を先伸ばしにさせただけなんじゃないかとか。
後悔しなかったことはないし、自問自答がなかったことはない。
(けど…やっぱり、)
それでも俺が鞠音に後ろめたくなく過ごせるのは鞠音のお陰なんだろう。
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