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目が覚めた。
白く眩む視界が徐々に輪郭を帯びてくる。
そこで自分が寝ていて、天井を見ているのだと理解するまでに時間はかからなかった。
「鞠…!」
「…。」
お兄ちゃんの声がして、私は導かれる。
「…。」
視線の先のお兄ちゃんは、私を見て泣き出しそうな顔をしている。
まただ。
また私はお兄ちゃんを困らせた。
困らせて、心配させて、助けさせた。
重くて動きにくい手をお兄ちゃんに伸ばす。お兄ちゃんはそれに気づくと、何の躊躇いもなくその手を握り返してくれた。
こんな悪い妹なのに。
こんなに酷い妹なのに。
こんなにどうしようもない妹なのに。
暖かい手に、私は救われる。
何度も何度も。
ずっと子の手に救われてきた。
「良かった…。鞠音が起きなかったらどうしようかと思った。」
そう言ったお兄ちゃんは本当に安心してるみたいだった。
一方で気づくのは、この場にいない両親の存在だった。
両親は私を疎ましく思っていた。
嫌っていた。
自分達の愛情に答えない娘を憎んでいた。
もちろん、それだけではない。
親としての愛情は熱く、献身的に関わってくれた。
娘を構成させようと必死だった。
そう言う愛憎のなかで葛藤していた。
両親は私との距離を図れずにいた。
私との距離を取れずに苛立つ両親との間に仲裁してくれたのはお兄ちゃんだ。
「…。」
『ごめんなさい』
私はそう呟くことしかできなかった。
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