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妹の異常に気付いたのは母親だった。
まだ赤ん坊だったのに、妹はその柔らかい指で自らの指で自分の身体を掻いていた。
母親は物をつかませてやめさせたが、今度は口で手をかじろうとしていた。
「痒がってただけじゃないのか?」
「ダニでもいるのかしら…群蓮の時は何もなかったのに……。」
俺の手を握って眠る妹を見ながら両親は話していた。
翌日から、母親はそれまで以上に掃除を綿密に行うようになった。
元々きれいに整頓された家だったが、毎日清潔な空気が漂っていた。
それでも妹の身体を引っ掻くような動作や、自分を噛む動作は止まらなかった。
母親はだんだん神経質になっていった。
妹を外へつれていかなくなり、外から家にに上がるときはクリーナーを使って埃を落とすことを家族に求めるようになった。
手は洗いすぎて荒れていた。
だんだんと、母の顔から笑顔が消えていった。
「どうして治らないんだろう…こんなに頑張ってるのに……。」
疲れた声で話す母親。
「一度医者に見せてみよう。」
困惑する父親。
妹は静かに眠ってる。
俺の手を握って。
「あんまりおかあさんを困らせちゃダメなんだぞ?」
妹の頭を撫でながら俺は寝てる妹に耳打ちした。
数件の医者を当たってみたが、健康上問題がなかった妹。
医者からはハウスダストの指摘を受けた。
母親は疲れている様子だった。
そんな状態で数年が経った。
妹の自傷は治らず、3歳までに3回、爪を剥いだ。
切り傷を作らない日はなかった。
夫婦喧嘩もよく起こった。
「お前がちゃんと見てないんじゃないか」
父親から言われた母親は泣きながらヒステリックを起こしていた。
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