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それから数年たった。
鞠音は自分を傷付け続けた。
小学校になっても奇行は変わらず、むしろエスカレートしていった。
ある時は鋏で自分の腕を切った。
指を落とそうとする。
酷かったのは、鉛筆で自分の手を刺してしまった。
毎日毎日、鞠音は自分の体を痛め続ける
。
学校から、『うちでは見られない』と言われた。
鞠音が何かする度に、母親はヒステリーを起こした。
父親は疲れていた。
やがて母親は鞠音に手を上げるようになっていった。
鞠音に聞いても言わなかったが、鞠音が自分につける生傷とは違い、ぶたれて晴れ上がったような痕があった。
その事で母親を責めた。
…いや、どんな言い方をしても、結局母親を責めてしまっていた。
自分の母親が、同じ家族の…妹の鞠音に手をあげていると言う事実が悲しくて、悔しくて……。
鞠音の事に関しては親と揉める事が多くなった。
俺は鞠音と親の間に立って、鞠音を庇い続けた。
鞠音自身も自分を否定し始めていた。
どんなに俺が『悪くない』と言っても、自分のせいで家族が喧嘩してれば当然だった。
鞠音が自分を『悪い』と言っても、それでも、俺は鞠音を庇い続けた。
鞠音本人も自分自身を否定し始めた今、自分が鞠音を見捨てたら、鞠音の味方が誰も居なくなると、確信していたから……。
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