第1章

3/3
前へ
/3ページ
次へ
室内は暗く、黴臭い匂いが充満していた。 「失礼。」 ネクロスが、燭台に明かりを点けた。 部屋が青白く光る。 広い室内の真ん中に、魔方陣が描かれており、その奥に祭壇があった。 祭壇の両脇には、二匹の獣の像がある。 ネクロスは、魔方陣の真ん中に歩み寄ると、エルスを手招きした。 「どうぞ、服を脱いでこちらへ、エルス殿。儀式を始めます。」 エルスは内心嫌だったが、抗えない力に突き動かされて、服を脱ぎ、魔方陣の真ん中に立った。 ネクロスは魔方陣を離れ、エルスを一人にすると、祭壇へと向かった。 二匹の獣の像が目を覚ます。 獣の咆哮が部屋に響き渡る。 「静まれ。レク!ロク!主のお目覚めだ。」 ネクロスは、獣を大人しくさせると、祭壇の上の箱を開いた。 そしてそこから、ドクン、ドクンと動く、血塗れの心臓を取り出した。 エバンスが生唾をのむ。 「これが我が主、カイザーの心臓です。では、儀式を始めます。」 ネクロスは、カイザーの心臓を手に取ると、魔方陣に立っているエルスに歩み寄った。 エルスは逃げようとしたが、魔方陣の呪縛で、身動きがとれない。 「や、止めてくれ!」 ネクロスはニンマリと笑った。 ネクロスが呪文を唱える。 ネクロスの心臓を持たない方の手が光り出した。 エルスは必死に逃げようとする。 でも身体が動かない。 ネクロスの光った手が、エルスの心臓に伸びる。 エルスは、声にならない悲鳴をあげた! ネクロスの手は、エルスの胸を貫き通し、エルスの心臓をわしづかみにした! そして、エルスの心臓を引っ張り出した! エルスが絶叫とともに、気を失う。 ネクロスは急いで、エルスの心臓のかわりに、カイザーの心臓をエルスの胸に押し込めた! 気絶したエルスが、再び悲鳴をあげる。 二匹の獣が吠えた! ネクロスは、ジルとエバンスを振り返ると、こう指示した。 「儀式は終わった。エルス殿を寝室に運んで、ゆっくり休ませるのだ。」 ネクロスの手には、まだ、ドクン、ドクン、動いている、エルスの心臓が握られていた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加