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「先輩、昨日どうでした?」
出社するやいなや、マイちゃんがあたしの隣にすり寄ってきた。
「え、別に普通に飲んだだけだよ」
ぎこちない笑みを作り、マイちゃんに向けた。
うん、本当の事だから、いちいち心拍を上げる必要はないよね。
自分でそう言い聞かせながら、机上の書類に目を通した。
「そうなんですか?つまんないなー」
「何、つまんないって」
「えー?先輩といい感じになってると思ってました」
「なっ、そんな訳ないじゃない」
一瞬ドキリとしたけれど、そのまま視線を書類から外すことなく、平静を装った。
「……なんか先輩、怪しいなぁ。
もしかして藤原さんに惹かれてます?」
……!
「そんな訳ないでしょっ!
マイちゃん在庫チェックしてきて」
「はぐらかしたー、ちゃんと教えて下さいね?」
口を尖らせ事務所から出て行くマイちゃんに背中を向けたまま、あたしは熱を帯びた頬に手の甲を当てた。
ーーー惹かれてなんか……
そう思ったのと同時に、心の片隅にあるマサトの存在が胸を痛めた。
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