浮く花びら

8/12
前へ
/100ページ
次へ
アパートの前で、ソワソワと足を動かすあたし。 動かそうと思ってる訳じゃないけど、いてもたってもいられなくて、勝手に動いてしまう。 のんが来てくれるのはあたしを好いてくれてるから、だよね。 じゃあ、あたしがのんを求めるのは……? そこまで考えていると、黒色のセダンがすごいスピードで近付いてきて、あたしの前で急停止した。 止まるなりすぐさま運転席のドアが開き、駆け足であたしに寄ってくる、人影。 その様子をスローモーションのように見ていると 「小梅っ」 額を濡らし、神妙な面もちをしたのんが、あたしの前に立っていた。 「大丈夫?なんかあったの?」 のん、だ。 こんな時間だからスーツではなく、Tシャツに綿パンを履いていた。 この格好は部屋着で、急いで駆けつけてくれたということが分かる。 目の前にいる“のん”という存在が、さっき完全に消え去った灯りの代わりに、胸の中に大きく灯った。 のんがいるとすごく安心するのは、何でだろう。 「……小梅?」 「あ……」 突っ立ったままのあたしの顔を、のんは心配そうに覗き込んできて、あまりの至近距離に胸が一つ、跳ねた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

801人が本棚に入れています
本棚に追加