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アパートの前で、ソワソワと足を動かすあたし。
動かそうと思ってる訳じゃないけど、いてもたってもいられなくて、勝手に動いてしまう。
のんが来てくれるのはあたしを好いてくれてるから、だよね。
じゃあ、あたしがのんを求めるのは……?
そこまで考えていると、黒色のセダンがすごいスピードで近付いてきて、あたしの前で急停止した。
止まるなりすぐさま運転席のドアが開き、駆け足であたしに寄ってくる、人影。
その様子をスローモーションのように見ていると
「小梅っ」
額を濡らし、神妙な面もちをしたのんが、あたしの前に立っていた。
「大丈夫?なんかあったの?」
のん、だ。
こんな時間だからスーツではなく、Tシャツに綿パンを履いていた。
この格好は部屋着で、急いで駆けつけてくれたということが分かる。
目の前にいる“のん”という存在が、さっき完全に消え去った灯りの代わりに、胸の中に大きく灯った。
のんがいるとすごく安心するのは、何でだろう。
「……小梅?」
「あ……」
突っ立ったままのあたしの顔を、のんは心配そうに覗き込んできて、あまりの至近距離に胸が一つ、跳ねた。
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