浮く花びら

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「あー……やばい」 「え?」 「いや、何でもない」 至近距離で見つめ合ったままだったのに、いきなりのんは立ち上がり片手で顔を押さえた。 ……? のんの不審な様子を不思議に思いながらも、今更ながら現状を理解したあたしは顔に熱が集まってくる。 あたしが好きな人はのん。 でも……のんからは“付き合って”とは言われていない。 “交際”を飛ばしていきなり“結婚”って……どうなんだろう。 のんの背中をボンヤリ見ながら考えていると、のんがいきなり振り向いて、不意打ちで目が合った。 そしてフッと、柔く笑った。 「小梅大丈夫そうだから、俺、帰るね」 「え?」 「明日も仕事でしょ?」 日をまたいでしまった今、のんがそう口にするのも当たり前だ。 だけど…… 名残惜じるのは、のんが好きだからかな。 そんな心情が顔に出ていたのか、のんはあたしに一歩足を近付け距離を詰めた。 「……小梅、そんな顔しないで。 俺、期待しちゃうから」 そしてあたしの左頬に伸びてきた、のんの掌。 頬に感じるのんの温もり。
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