801人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「あー……やばい」
「え?」
「いや、何でもない」
至近距離で見つめ合ったままだったのに、いきなりのんは立ち上がり片手で顔を押さえた。
……?
のんの不審な様子を不思議に思いながらも、今更ながら現状を理解したあたしは顔に熱が集まってくる。
あたしが好きな人はのん。
でも……のんからは“付き合って”とは言われていない。
“交際”を飛ばしていきなり“結婚”って……どうなんだろう。
のんの背中をボンヤリ見ながら考えていると、のんがいきなり振り向いて、不意打ちで目が合った。
そしてフッと、柔く笑った。
「小梅大丈夫そうだから、俺、帰るね」
「え?」
「明日も仕事でしょ?」
日をまたいでしまった今、のんがそう口にするのも当たり前だ。
だけど……
名残惜じるのは、のんが好きだからかな。
そんな心情が顔に出ていたのか、のんはあたしに一歩足を近付け距離を詰めた。
「……小梅、そんな顔しないで。
俺、期待しちゃうから」
そしてあたしの左頬に伸びてきた、のんの掌。
頬に感じるのんの温もり。
最初のコメントを投稿しよう!