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「分かった、ちょっと在庫とか確認するから先行くね」
あたしは早口でマイちゃんにそれだけ伝えると、まだ半分位しか手を付けていないお弁当をしまい、ロッカールームから出た。
のんに会える、その事があたしを加速させる。
プライベートじゃないから、“藤原さん”って言った方がいいのかな。
……プロポーズは、されないよね?
“ここ”では会う度にされていた、プロポーズ。
前までは全く意識のかけらもしていなかった。
けれど今は、のんの事が好き。
だから万が一されたら、どう返事をしたらいいのか分からないんだ。
……ただの自意識過剰だとは思うんだけどね。
「失礼します」
「……どうぞ」
約束の時間きっちりに開く、事務所の扉。
そしてそこから現れるのは、“藤原さん”。
「いつもお世話になっています。
すみません、急に予定変更させてしまって」
彼が軽く頭を下げながら謝罪するもんだから、あたしは完璧に困惑した。
……完璧に“藤原さん”だ。
じゃああたしも、“藤原さん”に接した方がいいよね。
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